タンパク質はどうやって身体を動かしているのか「筋収縮の仕組み」をhealthrankingでも検索する
理研の研究者が主導する国際研究チームは、筋機能にかかわる複雑な分子機序の解明に乗り出した。
この分野の研究は大きな注目を集めている。筋肉の仕組みが解明されれば、筋ジストロフィーやある種の心疾患などをより効果的に治療できるようになると期待されるうえ、使いやすい義肢や人工補装具の開発、果てはロボットや超微小デバイス用のバイオモーターの作製などへの応用も考えられるからだ。
分子レベルでみると、筋収縮は、ミオシンとアクチンという2種類のタンパク質間の複雑な相互作用として理解できる。ミオシン分子の頭部を詳しくみると、棒状のレバーアームの先端に、球状のモータードメインが結合した構造(図1)になっている。アクチン分子は長い鎖状に重合して、アクチンフィラメントとよばれる二重らせん状の繊維構造をとる。ミオシン頭部は、ラチェット装置(歯車と歯止めの爪を組み合わせて、歯車が一方向にしか回らないようにしたもの)のようにアクチンフィラメントへの結合と解離を繰り返しながらその上を「歩いて」いき、アクチンフィラメントがたぐり寄せられることで筋収縮が起こる。この過程に必要なエネルギーは、生体の標準的なエネルギー分子であるATPがリン酸基を放出する反応によって得られる。
理研のSPring-8大型放射光施設(播磨)を拠点とする研究グループは、ミオシン分子のアクチンフィラメントへの結合過程を詳細に調べた1。X 線結晶解析や電子顕微鏡分析を用いた初期の研究から、ミオシン分子の頭部にアクチンフィラメントとの結合に関与する領域(「パッチ」)が決定され、このパッチの三方は、ミオシン頭部から突き出たループで囲まれていることがわかっていた。そして、これらのループは、ミオシン頭部がアクチンフィラメントに結合する過程で、決定的な役割を果たすと考えられてきた。
今回、研究グループは、パッチを囲むループが、ミオシン頭部とアクチンフィラメントとの間の弱い相互作用を介して、フィラメントと直線状になるような構造をとるように各ループの構造を改変して、結合過程がどの程度妨害されるかを評価した。
この改変により、各ループはアクチンフィラメントと特異的で強い結合を生じるようになった。その結果、ミオシン頭部の形態が変化して、ある場所ではクレフトが閉じ、またある場所では、結合していたATP分子が露出して、その末端にあるリン酸基が解離できるような状態になっていることがわかった。つまり、ミオシン分子は、アクチンフィラメントに結合することで、ATP分子の末端リン酸を切断できるようになり、ミオシン分子をアクチンフィラメントから解離させ、頭部をさらに前進させるためのエネルギーが供給されることが明らかになったのだ。
「この研究は、アクチン活性化の機序の解明に向けた第一歩にすぎません」と放射光科学総合研究センターの尾西裕文は語る。「ミオシン頭部がアクチンに結合することにより、ミオシン頭部の一連の動きが始まるのです。今回と同じ実験手法を用いて、引き続きアクチン活性化に関する分子レベルの解析を進めていきたいと考えています」
図1:分子レベルでみた筋収縮 ▲上へ戻る
(Riken research)
【関連ページ】
【アクチン・ミオシン】actin,myosin
【筋肥大】muscle hypertrophy
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【ATP】adenosine triphosphate





